子どもがスマホで見ている動画に、女性の顔を両手でつかんで点数をつける配信者が映っていたら、あなたはどう反応するだろうか。いま海外で問題になっている「顔採点」配信とミソジニー(女性蔑視)文化は、ショート動画の切り抜きを通じて日本のタイムラインにも確実に流れ込んでいる。しかも多くの場合、字幕付きの「面白クリップ」として。
「顔採点」配信とミソジニーが娯楽になる構造
発端は、米国で人気を集める20代の配信者をめぐる報道だ。彼は「ルックスマッキシング」(容姿を磨いて序列を上げる考え方)の発信で知られ、配信中に他人の顔を評価し、女性を「攻略対象」のように語ってきた。現在は性的暴行などの罪で起訴され、本人は無実を主張している。裁判の行方は司法が判断することだが、注目すべきはそこではない。
問題は、彼ひとりの言動ではなく、女性を見下したり辱めたりすることが再生数につながる仕組みのほうだ。クラブやパーティーで女性に迫る様子、嫌がる相手に「まだ見終わってない」と言う場面、有名女優を「ブサイク」と切り捨てる評価。どれも短く、刺激的で、拡散しやすい。プラットフォーム側がチャンネルを削除しても、別アカウントや切り抜きの形で生き残る。
日本にも同じ土壌がある
「陰キャ/陽キャ」「格付け」「勝ち組/負け組」といった序列の言葉は、日本のネット文化にも古くから根づいている。近年は整形前後の比較、骨格診断風の「顔面偏差値」動画、恋愛工学的なナンパ指南なども人気ジャンルだ。海外のマノスフィア(男性至上主義的なネット言説)が翻訳され、国内のインフルエンサーによって語り直されるスピードも速い。
なぜ「ただの娯楽」で済ませられないのか
被害者支援の専門家が指摘するのは、若い世代にとって配信者が事実上の「人生の先輩」になってしまう点だ。筋トレ方法や恋愛のアドバイスを求めて見始めた子どもが、ついでに次のようなメッセージも受け取る。
- 女性は結局、顔と身長しか見ていない
- 人を辱めても、笑いが取れれば問題ない
- 関係の中では誰かが支配し、誰かが従うのが当たり前
英国の調査では、こうしたコンテンツを見ている人の多くが「ネタとして見ているだけ」と答えている。ただし、閉じたコミュニティに深く入り込んでいる人ほど、周囲の言動に異を唱えにくくなる傾向も見られた。輪に入り続けるためのコストとして、違和感を飲み込む——これは日本の学校やグループチャットでも起きうる話だ。
家庭でできる、現実的な三つの対処
1. 「見るな」ではなく「一緒に読み解く」
禁止すれば隠れて見るだけになる。おすすめは、流れてきた動画を一緒に見て「この人、なんで急に点数をつけたんだろう」「映ってる女性は同意してると思う?」と問いを投げる方法だ。批判する側に回る練習そのものがメディアリテラシーになる。
2. 暴力の「前段階」のサインを教える
専門家が繰り返し強調するのは、加害は殴る蹴るから始まるわけではないということ。服装や交友関係を指図する、人前で恥をかかせて小さく見せる、相手をモノのように語る。こうした支配とコントロールの初期サインを、子ども自身が言葉で識別できるようにしておくことが、被害にも加害にも効く。
3. 環境側で「深追い」を減らす
アルゴリズムは、一度止まって見た動画に似たものを延々と出してくる。視聴時間や年齢に応じた制限、家庭用ルーターのペアレンタルコントロール、おすすめ欄の「興味なし」設定などを組み合わせて、深い沼に落ちる確率を下げておきたい。中高生なら、設定の理由を本人に説明して一緒に決めるのが現実的だ。
本や道具は万能ではないが、会話のきっかけとしては非常に使いやすい。リビングに置いておくだけで「これ何?」から話が始まることもある。
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メディアリテラシー入門書
動画やSNSの情報をどう疑い、どう確かめるかを親子で学べる。配信の切り抜きを一緒に読み解く会話の土台づくりに使いやすい一冊です。
同意と性について学べる子ども向け書籍
「嫌だと言っていい」「相手の同意が必要」という感覚を年齢に合った言葉で伝えられる。支配的な関係のサインに気づく力を育てる助けになります。
ペアレンタルコントロール対応Wi-Fiルーター
利用時間やサイトのフィルタリングを家庭のネット側でまとめて管理できる。アルゴリズムに深追いさせない環境づくりに役立ちます。
よくある質問
子どもがこの手の配信を見ていたら、すぐやめさせるべき?
頭ごなしの禁止は逆効果になりやすい。まず何を面白いと感じているのかを聞き、そのうえで「映っている人は同意しているか」「自分が同じことをされたらどうか」という視点を足していくほうが、長期的には残る。
ルッキズム的な動画を見るだけで悪影響がある?
視聴イコール加害ではないし、一本見ただけで価値観が変わるわけでもない。ただ、同種の内容ばかりが繰り返し流れてくる環境では、極端な言動が「普通」に感じられやすくなる点には注意したい。
大人の自分が気をつけることは?
家庭内で容姿の評価を口にしない、配信者の暴言を笑い話として共有しない、といった日常の態度が一番伝わる。子どもは注意された言葉より、親が何を面白がるかを見ている。
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参考: Clavicular and the online culture that turns humiliating women into content(Mashable)の内容をもとに、日本の読者向けに独自に構成しています。
Photo by Towfiqu barbhuiya on Pexels